大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 平成6年(特わ)2468号 判決

本店所在地

東京都昭島市東町一丁目一三番地九

千代田舗道株式会社

(右代表者代表取締役 長谷川一夫)

本籍

新潟県新発田市中央町四丁目五三〇番地

住所

東京都東久留米市弥生一丁目五番三一号

会社役員

長谷川一夫

大正一五年一二月六日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官吉野浩子、弁護人遠藤晃各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人千代田舗道株式会社を罰金四五〇〇万円に、被告人長谷川一夫を懲役一年六月に処する。

被告人長谷川一夫に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人千代田舗道株式会社(以下「被告会社」という)は、東京都昭島市東町一丁目一三番地九(平成元年六月二一日以前は、同都西多摩郡羽村町五ノ神二丁目一三番地の二六)に本店を置き、舗装及び土木工事等を目的とする資本金五〇〇万円の株式会社であり、被告人長谷川一夫(以下「被告人」という)は、被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、その法人税を免れようと企て、工事収入を一部除外し、架空の外注工事費を計上するなどの方法により所得を秘匿した上

第一  平成元年四月一日から平成二年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億八〇四六万五八七一円(別紙1-1修正損益計算書及び1-2修正工事原価報告書参照)であったにもかかわらず、平成二年五月三一日、東京都立川市高松町二丁目二六番一二号所在の所轄立川税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一一三九万一〇五六円で、これに対する法人税額が三八二万四二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額七一三〇万六〇〇〇円と右申告税額との差額六七四八万一八〇〇円(別紙2ほ脱税額計算書参照)を免れ

第二  平成二年四月一日から平成三年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二億〇七四六万四二九二円(別紙3-1の修正損益計算書及び3-2修正工事原価報告書参照)であったにもかかわらず、平成三年五月三一日、前記立川税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が八九四万八一八〇円で、これに対する法人税額が二五七万七三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額七七〇二万〇八〇〇円と右申告税額との差額七四四四万三五〇〇円(別紙4ほ脱税額計算書参照)を免れ

第三  平成三年四月一日から平成四年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億一二七一万九一五二円(別紙5-1修正損益計算書及び5-2修正工事原価報告書参照)であったにもかかわらず、平成四年六月一日、前記立川税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一〇九三万七二二一円で、これに対する法人税額が三一九万六五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額四一三六万四八〇〇円と右申告税額との差額三八一六万八三〇〇円(別紙6ほ脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書八通

一  吉田米藏、縫吉雄(二通)、石田弘光及び藤田和良の検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の工事収入調査書、材料費調査書、外註工事費調査書、役員賞与調査書、交際費調査書、支払手数料調査書、受取利息調査書、損金の額に算入した道府県民税利子割調査書、交際費損金不算入額調査書、役員賞与損金不算入額調査書及び事業税認定損調査書

一  検察事務官作成の報告書二通

一  登記官作成の登記簿謄本

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の労務費調査書

一  押収してある法人税確定申告書一袋(平成七年押第八六号の1)

判示第二及び第三の各事実について

一  大蔵事務官作成の雑収入調査書及び雑損調査書

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の未払消費税認容調査書及び未払金認容調査書

一  押収してある法人税確定申告書一袋(同号の2)

判示第三の事実について

一  押収してある法人税確定申告書一袋(同号の3)

(法令の適用)

被告会社の判示各事実は、いずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項(判示第一の罰金刑の寡額については、刑法六条、一〇条により平成三年法律第三一号による改正前の罰金等臨時措置法二条一項による)に該当するので、情状によりそれぞれ法人税法一五九条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で被告会社を罰金四五〇〇万円に処し、被告人の判示各所為は、法人税法一五九条一項(判示第一の所為の罰金刑の寡額については、前と同じ)に該当するので、各所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役一年六月に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。

(量刑の理由)

本件は、舗装及び土木工事等を業とする被告会社の代表者である被告人が、工事収入を一部除外し、架空外注工事費を計上するなどして、三事業年度にわたり合計約一億八〇〇〇万円の法人税を脱税したという事案であるが、右のとおり脱税額は大きく、ほ脱率も通算九四パーセント余と高率である。犯行態様は、架空の取引先を用いたり、取引先に対する振込金受取書を改ざんするなど悪質であり、リベート資金等の捻出や自己の資産蓄積という犯行の動機にも格別酌量すべきものはない。また、被告会社は本件脱税に係る法人税本税のうち六九〇〇万円余を納付したものの、その余の本税及び附帯税は納付していない。以上によれば、被告人及び被告会社の刑事責任は軽視できないところである。

しかしながら、未納の本税及び附帯税については、被告人において納税へ向けた努力をしていること、被告人にはかなり以前の罰金前科二犯以外に前科はなく、本件を認めて反省していること、被告人は今なお被告会社にとって必要不可欠な存在であることなど被告人及び被告会社のために酌むべき事情も認められる。

以上のほか一切の事情を総合考慮すると、被告人については主文の懲役刑に処するとともにその執行を猶予し、被告会社については主文の罰金刑に処するのが相当である。

よって、主文のとおり判決する。

(求刑 被告会社・罰金六〇〇〇万円、被告人長谷川・懲役一年六月)

(裁判官 中里智美)

別紙1-1 修正損益計算書

別紙1-2 修正工事原価報告書

別紙2 ほ脱税額計算書

別紙3-1 修正損益計算書

別紙3-2 修正工事原価報告書

別紙4 ほ脱税額計算書

別紙5-1 修正損益計算書

別紙5-2 修正工事原価報告書

別紙6 ほ脱税額計算書

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例